介護経営情報

有料老人ホームのありかたについて、ポイントをおさえておきましょう

「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」とりまとめ素案が明らかに

2025年4月14日から始まり、全6回開催された「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」。

「質の確保」の問題やいわゆる「囲い込み」の問題等、特に有料老人ホームを経営されている皆様にとっては気になる議論が展開されてきた訳ですが、2025年10月3日、これまでの議論の整理が為され、ようやく今後の方針が明確になってまいりました。現段階においては「素案」であり最終形には至っておりませんが、大枠としてはそれほど大きな変更はないのではないか、と思われます。

今後、2027年度の法改正、場合によっては2027年度を待たず2026年度の改正も見据え、有料老人ホーム経営はどのように変化していくのか?今回は、「とりまとめ素案」の中から特におさえておいた方がよいと思われる内容を幾つか抜粋し、お届けしてまいります。




「とりまとめ素案」おさえるべきポイントとは

では、早速、中身に移ってまいりましょう。
先ず最初のテーマ、「有料老人ホームにおける介護・医療サービスの質の確保」に関する対応の方向性についてです(特におさえておくべきと思われる箇所については太字としています。以下、同じ)。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(有料老人ホームにおける安全性及びサービスの質の確保について)
○ 安全性の確保やサービスの適切な選択の確保の必要性の観点から、一定の有料老人ホームについては、行政の関与により入居者保護を強化すべく、登録制といった事前規制の導入を検討する必要があるのではないか。
○ この事前規制の対象は、入居する要介護者等の安全確保や人権尊重、認知症や医療ニーズへの対応の必要性が高いことを踏まえ、中重度の要介護者や、医療ケアを要する要介護者などを入居対象とするホームとすることが考えられるのではないか。
○ 有料老人ホームについて、利用者の選択に資するとともに、自治体が適切に判断・把握ができる仕組みが必要ではないか。

(具体的な基準について)
○ こうした有料老人ホームについては、特定施設やサ高住との均衡に配慮しつつ、高齢者の尊厳の保障、サービスの質の確保といった観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令上設ける必要があるのではないか。
○ また、併設介護事業所が提供するサービスや職員体制・運営体制との関係が曖昧にならないような基準を示す必要があるのではないか。
○ こうした制度を導入する場合、事業開始前に満たすべき項目として、現行の標準指導指針を一つの基準としつつ、一定以上の介護等を必要とする高齢者が居住する住まいであることを踏まえた人員・施設・運営等に関する基準を設ける必要があるのではないか。
具体的には、介護・医療ニーズや夜間における火災・災害等緊急時の対応を想定した職員の配置基準、ハード面の設備基準、虐待防止措置、介護事故防止措置や事故報告の実施等について法令上の基準を設ける必要があるのではないか。また、看取りまで行うとしているホームについては、看取り指針の整備が必要ではないか。また、サ高住等の制度も参考に、ホームによる不当な契約解除を禁止するなど、契約関係の基準等を盛り込む必要があるのではないか。
○ 特定施設と同様に、認知症ケア、高齢者虐待の防止、身体的拘束等の適正化、介護予防、要介護度に応じた適切な介護技術に関する職員研修も、既に何らかの介護関係の資格を有している場合等を除き、必要ではないか。
○ こうした基準等の策定に際しては、自治体ごとに解釈の余地が生じにくい具体的な形で規定する必要があるのではないか。また、各地域における実情を反映できるよう、一定の事項については参酌基準とすることが適切ではないか。

(介護・医療との適切な連携体制について)
○ 有料老人ホームにおいても、適切なアセスメントに基づいた質の高いケアプランの作成やサービス提供につなげていくことを確保する必要があるのではないか。有料老人ホームにおいて、高齢者本人や家族の相談窓口となる担当者を明確にすることや、必要に応じて有料老人ホームの職員が介護や医療現場のケアカンファレンスにも参加していくことも考えられるのではないか。
○ 医療機関と高齢者住まいの連携について、医療機関においては、診療報酬上の入退院支援加算の連携の仕組みを参考にするなど、地域の医療機関の地域連携室と高齢者住まいの連携を深めていく必要があるのではないか。また、医療機関の地域連携室に近隣の高齢者住まいのパンフレットや契約書を共有しておくなど、常日頃から医療機関と地域の高齢者住まいが情報共有しておくことが考えられるのではないか。

(サービスの見える化について)
○ 事業者自らの質の改善と高齢者やその家族の適切なサービス選択に資するため、客観性・専門性を有した第三者が外部からサービスの質を評価することが必要ではないか。そのためには、事業者団体による既存の第三者評価の仕組みを一層活用していくことが有効であり、これを制度的に位置付けることも必要ではないか。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

続いてのテーマ、「入居者による有料老人ホームやサービスの適切な選択」に関する対応の方向性についてです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(入居契約の透明性確保について)
○ 消費者保護の観点から、契約書や重要事項説明書、ホームページなどにおいて、事業者が十分な説明や情報提供を行うことを確保する必要があるのではないか。また、契約書や重要事項説明書を契約前に書面で説明・交付することを義務づける必要があるのではないか。
○ より具体的には、重要事項説明書等において、特定施設・住宅型の種別、介護保険施設等との相違点、要介護度や医療必要度に応じた受入れの可否、入居費用や介護サービスの費用及び別途必要となる費用、施設の運営方針、介護・医療・看護スタッフの常駐の有無、看取り指針の策定の有無、退去・解約時の原状回復や精算・返還等に関する説明が確実に行われることが必要ではないか。
○ 特に、有料老人ホームと同一・関連法人の介護事業者によるサービス提供が選択肢として提示される場合には、実質的な誘導が行われないよう、中立的かつ正確な説明が確実に実施される必要があるのではないか。また、多くの高齢者は有料老人ホームを「終の棲家」とすることを想定していることから、要介護状態や医療処置を必要とする状態になった場合に、外部サービス等を利用しながら住み続けられるか、看取りまで行われるか、あるいは退去を求められるかについても、しっかりとした説明が確実に実施される必要があるのではないか。

(情報公表の充実について)
入居希望者やその家族、ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー等が活用しやすい有料老人ホームの情報公表システムが必要ではないか。入居希望者やその家族が必要とする前述のような情報を条件検索できるようにした上で、抽出したり条件により並び替えられる機能を盛り込んだり、数値等をグラフ化して視認性を高めるといった工夫が考えられるのではないか。
○ こうした情報公表システムの充実が求められるところ、現状の介護情報公表システムへの情報の入力・登録を行っているホームが十分でないことを踏まえ、各有料老人ホーム事業者に対して入力を促すための方策を検討する必要があるのではないか。

(適切な相談先の確保について)
○ 地域ごとにワンストップ型の相談窓口を設け、相談内容に応じて専門的な機関につなぐ連携の仕組みを構築することが有益ではないか。特に、高齢者住まい選びや入居後の苦情相談について、ノウハウを有する公益社団法人有料老人ホーム協会などの人員体制や周知の充実を図り、活用の一層の推進を図ることが有効ではないか。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

続いてのテーマ、「入居者紹介事業の透明性や質の確保」に関する対応の方向性についてです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○ 高齢者やその家族、自治体、医療機関、地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー等が、事業者団体が実施している現行の紹介事業者届出公表制度における行動指針に則り適切に事業を運営している紹介事業者を、確実に確認・選択できる仕組みが必要ではないか。
○ このため、現行の紹介事業者届出公表制度を前提に、公益社団法人等が一定の基準を満たした事業者を優良事業者として認定する仕組みの創設が有効ではないか。
○ 紹介事業者には、高齢者に対する意思決定支援・権利擁護の機能を持つことが期待されていることから、こうした仕組みのなかで、紹介事業者が、利用者に対して自らの立場を明確に説明したうえで、中立的な立場から、正確な情報に基づき入居希望者の希望に合った有料老人ホームを紹介すること、成約時に有料老人ホーム側から紹介手数料を受領すること、紹介手数料の算定方法等を、入居希望者に対し事前に書面で明示するといった対応が必要ではないか。
紹介手数料の設定については、賃貸住宅の仲介を参考に、例えば月当たりの家賃・管理費等の居住費用をベースに算定することが適切ではないか。
○ 有料老人ホーム運営事業者においても、紹介事業者の活用や提携の有無、紹介手数料の算定方法等を公表するとともに、入居希望者に対し明示する必要があるのではないか。
○ このため、紹介事業者届出公表制度に基づく情報公表の仕組みを充実させ、紹介事業における業務内容やマッチング方法、紹介可能なエリア、提携する高齢者住まい事業者、紹介手数料の設定方法等について検索可能なシステムを作る必要があるのではないか。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

続いてのテーマ、「参入後の規制のあり方」に関する対応の方向性についてです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○ 参入後の事業運営の質の維持が確保されることも重要であるため、更新制の設定や、一定の場合に更新を拒否する仕組みが必要ではないか。
不正等の行為により行政処分を受けた事業者について、役員等の組織的関与が認められる場合には、一定期間、事業所の開設を制限する制度の導入についても検討が必要ではないか。
経営の継続が困難と見込まれる事業者に対しては、迅速な事業停止命令等の行政処分を可能とするための整理が必要ではないか。
○ 標準指導指針については、老人福祉法に基づく統一的な基準を策定することが必要ではないか。
○ 事業廃止や停止等の場合においては、事業者が、十分な時間的余裕を持って説明するとともに、入居者の転居支援、介護サービス等の継続的な確保、関係機関や家族等との調整について、行政と連携しながら責任を持って対応することに関する一定の義務づけが必要ではないか。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

最後のテーマ、「有料老人ホームにおけるいわゆる「囲い込み」対策のあり方」の中の「住宅型有料老人ホームにおける介護サービスの提供について」に関する対応の方向性についてです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(ケアマネジメントのプロセスの透明化について)
有料老人ホームへの入居時に、入居希望者への自由なサービス選択が確保されることが重要であり、介護事業所と提携する有料老人ホームにおいて、ケアマネ事業所やケアマネジャーの独立性を担保する体制の確保として、指針の公表、施設長・管理者への研修、相談担当者の設置等の措置を行うこととしてはどうか。
○ 併せて、一定の独立性が担保されない形での事業運営を行っている住宅型有料がある現状を踏まえ、こうした住宅型有料におけるケアマネジメントとの関係性について整理することも考えられるのではないか。
○ 入居契約において、ホームと資本・提携関係のある介護サービス事業所やケアマネ事業所の利用を契約条件とすることや、利用する場合に家賃優遇といった条件付けを行うこと、かかりつけ医やケアマネジャーの変更を強要することを禁止する措置を設けてはどうか。
○ また、有料老人ホームにおいて、入居契約とケアマネジメント契約が独立していること、契約締結やケアプラン作成の順番といったプロセスにかかる手順書やガイドラインをまとめておき、入居希望者に対して明示することや、契約締結が手順書やガイドライン通りに行われているかどうかを行政が事後チェックできる仕組みが必要ではないか。
○ 行政による運営指導においてこうした対応を有料老人ホーム運営事業者や介護サービス事業者に徹底することや、ケアマネジャーに対して研修等により確実に周知することが考えられるのではないか。

(自治体による実態把握について)
有料老人ホームがケアマネ事業所や介護サービス事業所と提携する場合は、有料老人ホームが事前に当該提携状況を行政に報告・公表し、ケアマネ事業所や介護サービス事業所の契約に関して中立性が担保されるための体制を行政がチェックできる仕組みが必要ではないか。
○ 住宅型有料やサ高住に入居した場合に、ケアマネ事業所が保険者に連絡票を届け出ることで有料老人ホームとケアマネ事業所の情報を紐づけることが有効ではないか。

(住まい事業と介護サービス等事業の経営の独立について)
妥当性が担保されない事業計画に対する行政の事前チェックが働くことが必要ではないか。
○ 有料老人ホーム運営事業者が介護サービス等と同一・関連事業者である場合は、当該ホームの事業部門の会計と、介護サービス等部門の会計が分離独立して公表され、その内訳や収支を含めて確認できることが必要ではないか。

(地域に対する透明性の向上について)
○ 有料老人ホームが地域と交流し、地域の中でより積極的な役割を果たしていくことが重要ではないか。このため、地域密着型サービスの運営推進会議や、地域の医療・介護連携会議への参加推奨なども行い、地域での顔の見える関係づくりを通じ透明性の向上を促すことが必要ではないか。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

国策の“風"を読み取り、早め早めの準備を

以上、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」とりまとめ素案の「対応の方向性」箇所を中心に抜粋してお伝えさせていただきました。上記内容が本格的に決定・実行された場合、有料老人ホーム経営には一定の影響が出てくるのではないかと思われます(特に「囲い込み」の部分等)。

事業者としては上記内容を冷静に踏まえつつ、「これらの情報が現実となった場合、自社の経営にどのような影響が出るだろうか?」、そして「それらの影響に対し、どのように適応していくか?」について、事前に頭を働かせておくことは勿論、内容によっては打ち手や対策を早急に検討・開始していくことも重要だと思われます。是非、その観点からも本情報を有効に活用していただければ幸いです。

私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※引用元資料はこちら

事業所における介護労働実態調査結果報告書(令和6年度)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001573535.pdf


(2025-10-29)

バックナンバー 印刷する印刷する

◆ まずはお気軽に無料相談を ◆

「専門家に頼むと相談するだけでコストがかかるのでは・・・」とお思いの方が多いかもしれませんが、心配いりません!弊社では、個別無料相談を実施しております。支援内容と費用にご納得いただいた時点で正式なご契約となりますので、まずはお気軽にお電話ください。

電話番号:075-647-0881 営業時間:平日 9:00〜18:00 杉田公認会計士・税理士事務所へのお問い合わせは今すぐお気軽に!無料相談受付中!
介護事業者向けセミナーのご案内
お問い合わせ

(株)杉田総合経営センター 杉田公認会計士・税理士事務所

〒612-0807
京都府京都市伏見区深草稲荷中之町33番地
杉田センタービル
TEL:075-647-0881
FAX:075-647-2657

株式会社杉田総合経営センター 医療事業部
あしたのチーム

このページの先頭へ

杉田公認会計士・税理士事務所

075-647-0881
営業時間 平日9:00〜18:00

会計ソフト「MFクラウド会計」